卓球迷宮地下1階

~貼ったり はがしたり また貼ったり~

2019年12月

 まもなく2019年が終わろうとしている。
 あれこれ振り返ろうとしたが、綺麗さっぱり記憶から失われている。
 慌てて過去記事を見返すと、今年はWRMの正月セールから始まったようだ。
 そのままリンさんと葛飾区まで移動して、卓log会の練習会に参加している。
 なかなか良いスタートを切ったらしい。
 その後、ユーウェルク卓球場の個人レッスンNetIn&EdgeBallClub練習会を中心に、卓log会の練習やLiliでレッスンを受けたりしている。
 今年の特筆すべき事柄の一つに、月曜昼間餃子会の発足がある。
 いわば卓log会のスピンオフ企画だが、楽しいので来年も開催できると嬉しい。
 
 用具の話で言えば、今年のメインはUltimateOffensive2とQ5であった。
 UltimateOffensive2は色々ラバーを試行錯誤したあげく、フォアQ5バックマントラSでほぼ固定された。
 ラケットの購入は意外と少なく、年始にくじであたった王道04、リンさんからもらった神威、PF4、ラバー貼りラケット、フォーティノフォース、それと年末に買ったインフォレス(めんどうなのでこれでいく)。
 中華ラバー巡りも一段落して、最近はキョウヒョウばかり買っている。
 
 
 ナルコ師との珍道中も定番化の勢いで、来年もRedT TokyoPingPongBaを超える新名所を訪問してみたい。

 技術的にはあまり進歩が無く、体は衰えていくばかりである。 
 年末になって、体力回復の切り札リングフィットアドベンチャーを購入したので、年明け頃には相当シェイプアップされているはずだ。

 同時に卓球を始めた娘は中学3年生となり部活を引退。高校では続ける気は無いとの事なので、自分の中でも一区切り着いてしまった感もある。
 
 来年の目標
 ①無駄なラケットは買わない
 ②欲しいラバーがあっても一度冷静になって考えて、それでも欲しかったら買う
 ③のりすけさん業務用は1年に1本
 ④使わない怪しげな用具には手を出さない
 ⑤セールに踊らされない

 用具の目標ばかりだ・・
 
 以上!
 
  

 一口に鉄道ファンと言っても様々なジャンルに分かれるらしい。
 興味が無い私から見たら皆同じに思えるが、当事者からしたら大きな差があるそうだ。
 音楽にしたって演奏が好きな人、鑑賞が好きな人、音響マニアと色々ある。その中でもさらに細分化されるだろう。
  隣接したジャンルの人とはある程度話もできるが、差異が大きくなるともはや共通の趣味とは言えない。
 
 卓球もしかり。
 試合で勝つことを目標にしている競技者に近い人、健康目的や練習そのものが楽しい人、試合観戦が好きな人、用具が好きな人、選手に興味がある人、等々。
 練習中には気にならないこの違いが、飲み会の時には結構気になる。
 
 卓log会のメンバーを例にとって話を進める。
 下図を参照して欲しい。


メンバーグラフ

 



 




















 私が無理矢理聞き出したメンバーそれぞれの興味の志向を割合で示したグラフである。
 合計が10に満たないメンバーが何人かいるが、共通の項目以外をどうしても選択せずにはいられなかったメンバーなので、今回は除外。彼らが何に割り振ったのかは卓log会の公式ブログを見て欲しい。
 
 

 このグラフは試合に対する興味の割合が大きい順に並べ替えてある。
 当たり前だがメンバーのほとんどはこの割合が高い。
 なのでみな大会を通しての知り合いだったりもする。
 この割合が低い人にとっては、試合の話自体は興味を持って聞くことが出来るが、知り合いの知り合いとか、誰それが強いとか、その辺になるとどうにもならない。
 
 技術は総じて高い傾向にある。
 技術は練習と言い換えることも出来る。
 ただし飲み会などで技術の話題で盛り上がることはあまりない。

 観戦は曲者だ。
 ここに数値を割り振っている人は海外の選手から昔の選手から次世代の選手まで詳しいことが多い。
 ほとんど興味の無い私にとっては鬼門である。

 用具も一筋縄ではいかない。
 例えばナルコさんは、飲み会で用具の話になるとあまり参加してこない。
 立野Bさんも用具の割合が少ないが、あくまで割合の話であって決して量は少なくない。
 一見用具の割合が多いように見えても、試合志向が強い人にとっての用具は、試合に勝つための用具である。あまり極端な用具やマイナーな用具は話題に上らない。中華ラバーの話より、テナジーのスポンジ厚による違いとか、G1とV15の違いとか、何かそんな感じの話になる。
 逆に試合志向が少ない人にとっては、色々な用具をただ試すことそのものが楽しいのである。
 誰も聞いた事の無いラバーの話とか、WRMの新作ラバーの話とか、そっちのほうで盛り上がる。
 かみ合うようでかみ合わない。
 

 さて上記グラフにもう一度目をやる。
 試合志向の割合が少ない下位グループに属するのはナルコさん、リンさん、立野Bさん、つじまるさん、そして私である。ほぼ月曜昼間餃子会のメンバーである。
 厳密に言えばナルコさんもリンさんも試合には進んで出るタイプだ。
 ただそれだけではなく、卓球そのものを楽しもうという姿勢が見られる。
 立野Bさんも近いポジションである。
 
 卓球好きにも色々ある。
 ただそれだけの話。
 私は飲み卓。
 つじまるさんは楽卓。
 ナルコさんはネタ卓。
 
 
 あなたは何卓?
 
  

 予定していたレッスンが事情によってできなくなり、藁にもすがる思いでつじまる師匠に連絡を取ってみたところ、相手をしていただけると嬉しいご返事。
 前日届いたばかりのインナーフォースレイヤーALC.S(長い)と、火山岩、ピュアカーボンと3本のみを持っていく。
 火山岩7にはキョウヒョウ2、ピュアカーボンにはキョウヒョウプロターボオレンジ(長い) が貼ってあるが、気持ちは新入りのインナーフォースレイヤーALC.S(長い!)に集中していて、言うなればオマケみたいなものだ。
 
 相変わらず埼京線が遅れて9:40分過ぎにようやく体育館へ到着。家を出てから実に2時間経っている。
 前日の大雨が嘘のように晴れ渡り、済んだ青空の下卓球が出来る幸せを噛みしめる。
 卓球教室未開催の幸運にも恵まれ、すぐさま練習開始。
 12月に入ってから3週間連続でつじまる師匠と練習となった。
 
 最初に使ったインナーフォースレイヤーALC.S(長い!!)が想像以上に気持ちよく、いきなりテンションが上がる。
 フォアのテナジー25FXもバックのロゼナも良い感じ。
 もう貴方だけいればそれでいい、そんな気分。
 そのような幸せ気分もツッツキ練習をしたらあっという間に冷めた。
 回転の影響をもろに受けるのか、ネットばかりで冷や汗をかく。
 いや、腕の問題だろう。
 貴重な時間のスーパー銭湯、もとい数%を割いてツッツキの練習をして、より弾まない根本付近でツッツキをする荒技で辻褄を合わせた。

 つじまる師匠にも色々お借りして、特にヤサカのマリンエキストラオフェンシブ?にテンキョク2が実に楽しいラケットで、いつまでも打ち続けていたい欲求に駆られた。
 私は買ったばかりのインナーフォースレイヤーALC.Sを持っていったのだが、偶然つじまる師匠も同じラケットの中ペンを買ったばかりで、フォア面に気になるラバーのヴェガXを貼っていた。
 早速借りて打ってみたのだが、どうもしっくりこない。
 こういう感覚を伝えるのは難しいのだが、もう少し硬いラケットの方が合いそうである。

 1時間30分ほど用具を試し、残りは真面目に練習。
 サーブからの展開などなど。
 今練習しているのは巻き込みサーブの構えから順横でバックのサイドを切るサーブ。
 ペンのナルコさん対策だが、同じペンのつじまるさんにあっさり返球されたのはガッカリ。
 こんなんじゃ高知県チャンピオンには通じない。

 
 3時間みっちり打ち合って、冬だというのに汗をかき、腹も減り、いつものあれといこうじゃないか。
 告白するなら1時間30分くらいたった時点で空腹を覚えて、時計ばかり見ていた。
 
 着替えをして外に出ると、青空が広がる良い天気。
 歩きながらも色々会話が弾む。
 
 何だか混み合っていたが、30回目くらいの和風ファミリーレストランで乾杯をした。
 今回はすきやき定食だが、これも結構食べたなあ。
 それと串カツ。
 こうして書いていながらよだれが出てきたよ。
 酒を飲みながらインナーフォースレイヤーALC.Sには何のラバーが合うのかしらとか、2人の馴れ初めとか、卓log会の今後の行く末とか、話題が尽きない。
  いつものようにバスの停留所でお別れして、帰路についた。
 来年も練習できると良いなあ。 

 とにかく早く使いたいので、手持ちのラバーからチョイス。
 バタフライラケットにはバタフライのラバーだろう。
 ということで、サイズも加味しながらテナジー25FXとロゼナを貼った。
 
 最初のフォア打ちから特徴がはっきりと分かった。
 多少強く打ってもしっかりと掴む。
 打ちたい方向に向かって振ると、スイングスピードがそのまま球に伝わって、思っているよりも速くて強い球になる。
 これはラケットの性質だと思われる。
 かなり強く打っても特殊素材らしい反発を感じないまま、球にはしっかりと強さが伝わっている。
 
 試合では使わなそうだが、スイングスピードを回転にのみ変換するような、つまり極端なループドライブがとても打ちやすい。
 これはラバーとラケット、両方の性質か。 
 テナジー25FXは主にアルバに貼って使っていたが、アルバに比べるとインナーフォースレイヤーALC.Sの方がスピードが出る。

 フォアロング、ドライブ、バックと試して、イメージと打球のギャップがほとんどなく、 これはいきなり最高の組み合わせを見つけてしまったと興奮してしまった。

 いくらなんでもフォア打ちだけでは判断できないので、ツッツキを試した。
 このツッツキには苦戦した。
 シートが強いのか、相手の回転やスピードに過剰に反応して、ネットや浮き球を連発。
 イメージとあまりにギャップがあって、嫌な汗が出てきた。
 最終的には、弾まないブレードの根本付近でつっつく、モールドツッツキというオリジナル技で対処できた。
 ツッツキが安定して出来ないと健康卓球教室で困ったことになる。
 バック面のロゼナはやりやすかったので、これはやはりテナジー25FXが原因であろう。

 練習中にはフォア面をどのラバーにチェンジしようかとばかり考えていたが、今冷静に考えるとテナジー25FXでもう少し頑張ろうかとも思う。
 意外とファスタークG1とかラザンターが合うのかもしれない。


 
 

 初のバタフライラケットである。
 頂き物のコルベルはあるが、買うのは初めて。
 今までバタフライラケットを買わなかったのは、割引率が低くて損な気がしていたからだが、おかげでどんなラケットがあるのかも正確には把握していなかった
 インナー何とかにも色々種類があって、いざ買おうと思うと迷う。
 そもそもバタフライラケットが気になりだしたのは、張本智和選手の活躍を見て、張本選手モデルのラケットに興味が出たからだ。
 先日の練習で立野BさんにインナーフォースレイヤーALCを試させてもらったが、グリップが私には太すぎた。
 そんなわけで買ったのはインナーフォースレイヤーALC.S。
 早速箱から出して撫でたりさすったり匂いを嗅いだり。
 ラケットコートを塗らなければならない我が家の決まりがあるので、 しっかりと塗り塗り。
    ニッタクのそれは液の出が悪く、TSPのラケットコートが廃盤になったのがつくづく残念。

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 嬉しかったので写真を撮ったよ

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 憧れの青いブサブサ。これがアレリートなのか?

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 そういえばグリップ底の保護フィルム剥がしていないや


 ちなみに重さは90g。
 そこそこ重い。
 
 さっそく使ってみた話は次回。 

 先週くらいから湖南料理湖南料理と耳元で呟かれても、あたしそもそも湖南料理って知らないんですけど。
 「本場の湖南料理を食べようよ」
 なんて、いくら言われても、知らないものは知らない。
 そんな言葉に騙されて、ホイホイついていく女の子もいるのかなあ。
 あたしは違うよ、とは言えない。情けないけど。
 だって美味しい料理とお酒を飲んだら、あたしはきっと楽しい気分になると思うし、そうなったら、ね。

 

 「辛いです」
 「これは辛い」
 「辛いのは好きだけど苦手だ」

 立野さんご推薦の「本格湖南料理 李厨」での会話は8割方こんな感じ。
 確かに美味しい。
 美味しいけど辛い。
 辛くて辛くて涙が止まらない。
 泣きながらビールを口の中に注ぎ、一瞬だけ痛みが和らぐが、またすぐぶり返す。
 卓球の話とか、色々したいがこれは無理。
 
 このお店は高田馬場さかえ通りにある一見普通の中華料理屋だが、店員も客もほぼ中国人で、日本語がほぼ聞かれない。
 1人では決して入らないであろう、そんな店だ。
 ああ、言っておくけど、料理は美味しい。
 辛いのが好きならオススメである。

 ビールでは無く水を飲んだら辛さも和らぎ、ようやく普通の会話が出来るようになったので、またまた卓球TALKに花を咲かせた。
 いくら話しても尽きることは無い。
 残念なのは、ほとんど覚えていないことだが。
 
 散々卓球話をしているうちに、またぞろ卓球をしたくなってきた。
 この卓球をしたいという欲望は、はたしてどこから来ているのだろうか。
 永遠のテーマであるなあ。
 
 立野さんと別れを告げて、電車に乗り込むのであった。

 終わり
 

 
  

 風が鳴っていた。
 道にせり出した大きなケヤキの木が揺れる度に、黄色に熟した葉がひらひらと舞う。
 冬を目の前にした秋の終わりは、色鮮やかなのにモノトーンでもある。
 こういう季節も嫌いじゃ無いと、良介は思った。
 本来なら今頃飲み始めているはずである。
 はずであったが、時間が早すぎて繁華街に灯が入っていない。
 その鬱憤を晴らすように人混みを早足で歩く。
 何でこうなった。
 その思いが良介にはある。
 何だよ、畜生。
 思わず声に出してしまって、慌てて口をふさいで辺りを見回す。
 卓球なら誰にも負けない。
 そう自負していた。
 自分は見た目も悪い。
 気の利いた言葉も言えない。 
 頭も悪いし、金も無い。
 連れはいても友達とは言えない。
 横にいる立野だって、内心何を考えているのか分からない。
 ただ世間から受け入れられない、そのか細い連帯感で繋がっているだけだ。
 卓球だけは自信があった。
 もちろん全国1位であるとか、そんなレベルの話では無い。
 無いが、少なくともそのこら辺りの経験者気取りには負けない。
 そのプライドとも言えないプライドが、あっさりと砕かれたのだ。
 なにより砕いた相手にとっては、記憶にも残らない一戦である事が明白で、それがまた悔しかった。
 何だよ、何だよ。
 また声に出してしまった。
 酒でも飲まずにはいられなかった。
 その酒が飲めないのなら、また練習するか。
 




 「まだどこも空いてないですねえ」
 「そりゃそうですよ、まだ4時ですもん」
 日が沈むのが早いので忘れがちだが、まだ午後4時なのだ。
 みっちり練習をして、早く酒を飲みたかったのだが開いてないなら仕方が無い。
 そういえば先週行きそびれた山手卓球を見てみたい。

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 聖地聖地と言いながら、山手卓球を知らないなんて、モグリですね。

 ん
 幻聴?

 いつも歩いているさかえ通りを1本奥に入った場所に山手卓球がある。



 道一つ違えば、今でも人攫いや拐かしがいるから、注意するように


 暗転


 ・・・

 中に入ると予想通りの渋い卓球場で、2組ほど先客がいた。
 見るとスリッパで卓球をしていて、なるほどこういう場所なのねと納得。
 こうして本日3回目の練習開始。
 
 山手卓球は、台と台の間が狭いことと、卓球台がツルツルで滑ることと、石油ファンヒーターが効き過ぎて暑いこと以外は最高の環境である。
 まるで自分が傑作卓球マンガの「ピンポン」の登場人物になったような気分になれる。

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 最初はキョウヒョウ301にマークVXS。
 やっぱりネットばかりで早々にピュアカーボンにチェンジ。
 この回はお互いのサーブからの展開を重点的に練習した。
 私はバック側のサイドを切る順横サーブ。
 なぜだか調子が良くて、面白いように決まる。
 楽しい。
 上手く行くから楽しい。勝つから楽しい。
 
 立野さんにはフォア側に下回転サーブを出してもらって台上の練習。
 成功した記憶ばかりだが、冷静に考えて見ると9割方ミスしている。
 むりやり起こさないで、素直にツッツキにするべきであろう。

 何だかんだであっという間に1時間がたった。
 ファンヒーターのおかげで汗もたっぷりかいて、準備万端いつでも飲める。
 
 



 
 

  

 駅前の緩い坂を新宿方面に向かってしばらく歩くと、急に目の前が開けて戸山公園にぶつかる。
 一口に戸山公園と言っても明治通りによって大きく2つに別れていて、山手線内で一番標高のある箱根山を中心とした箱根山地区と、そこよりは一回り小さい大久保地区がある。
 私たちの目的地である新宿スポーツセンターはその大久保地区の入り口付近に建っていて、地域住人にスポーツの場を提供する貴重な施設になっていた。
 当時、つまり貴絽良介が40代を過ごした2010年代後半は、長い不況のトンネルを抜けること無く、新元号と東京オリンピックを迎えることになり、興奮と冷めた雰囲気の渾然とした、一種異様な時代と言えた。
 さて今回テーマとしている卓球についてだ。
 2016年リオデジャネイロオリンピックにおいて、男子団体銀、女子団体銅、男子シングルス水谷隼銅メダルと好成績をあげた事が注目を集める結果となったのは間違いない。また、伊藤美誠、平野美宇、張本智和を筆頭とする若手の台頭も相まって、日本人好みの様々なドラマが生まれ、東京オリンピック1年前から盛り上がりを見せていた。(敬称略)
 その影響は一般プレーヤー層の増大という目に見える形になって現れる。
 かつては趣味としての卓球を楽しもうとしても、肝心の場所もやる相手も不足していて、マイナー競技のプレーヤーとしての悲哀を味わっていた彼らが、いざ卓球がメジャースポーツに半ば昇格と言った形になった途端、貴重な練習場が満員で利用できないという現実に直面することになった、





 なったんだよなあ、と頭の片隅で考えながら立野さんと再びスポセンのドアをくぐった。
 午後の部開始から30分たってしまっていたので、もしかしたら台が埋まっているかも。
 いつもの貧乏性が私の足を早足にさせる。
 3階まで階段を上り、小体育室のドアを開けて中を覗く。
 ガラガラだ。いつものスポセンだ。
 安心したところで早速練習開始。
 立野さんとは夏に練習して以来だ。

 立野さんはほぼ同時に卓球を始めた貴重な大人卓球初心者仲間で、しかも同い年というさらに貴重な練習相手でもある。
 いつも私より2周くらい先を行っているので、色々アドバイスをくれる。
 しかも今回私の気になっているラケット、インナーフォースレイヤーALCを持ってくると言っていたので楽しみにしていた。 
 私の方も、立野さんのリクエストに応えて今時珍しいガチガチのカーボンラケット、カブリオレを持ち込んでいた。
 立野さんの球は健康卓球教室の方々より遥かに速いので、なれるまで時間がかかる。
 最初のフォア打ちから色々駄目出しをされてしまったが、後から考えてみたらマークVXSが弾まなすぎたのも良くなかった。いつもの遅い球ならマークVXSやキョウヒョウも有りだが、そこそこ速い球になると難しくなる。
 対立野さんに一番良かったのは、アウターカーボンのカブリオレや分類不能特殊素材ピュアカーボン。
 回転とスピードが乗っている球も、カーボンラケットなら全く押される事無く返球できる。
 そのかわり下回転を持ち上げるのはちょっと苦労するので、ロングサーブ主体の展開が良いに違いない。
 お借りしたインナーフォースレイヤーALCは板厚が6mmとのことで、グリップが太いのが気になった。
 それよりも立野さんが以前から愛用しているカルテットAFCの方が遥かに打ちやすい。
 私の所持するカルテットLFCとは兄弟ラケットのはずだが、随分と打球感が異なっていて、AFCは柔らかい中にも力強さも兼ね備えている、扱いやすくて威力もだせる、バランスの取れた良いラケットだと思う。 返す返すもデザイン変更が残念でならない。
 フォアドライブの打ち方も教わって、回転がかからないのを改善する為のラケット角度とか、バックドライブを中陣から打つコツとか、有り難いアドバイスをもらった。
 二人してラケットをとっかえひっかえして2時間30分ほど練習をした。
 立野さんはアウターカーボンを気に入ったようで、もしかしたら今頃ポチッとしているころかもしれない。ティモボルALCとかね。 
 私も用具に関して色々学ぶことが有り、とりあえずマークVXSは諦めた。
 省狂3も。追加注文中なのに。
 16時の閉館ギリギリまで練習して、スポセンをあとにした。
  

 駅前の大きな交差点で、つじまるくんと2人して立っていると、あまりの人混みに目眩がしたような、そんな気がして良介は、そっと傍らに立つつじまるくんの分厚いジャケットの袖を掴みました。
 戦争が終わった直後は闇市で賑わった高田馬場駅前も、警察が厳しく取り締まったので、いまではすっかりきれいな町並みになったのだと、職業軍人だったお父さんがいつだか話してくれた事があります。
 道一つ違えば、今でも人攫いや拐かしがいるから、注意するようにとも。
 そういえば道行く人の中に、未だにボロボロのゲートルを巻いた軍服姿の男や、上下ちぐはぐな服を着たルンペンや、素早く走り回る浮浪児らしき姿が目に入ってきます。

 「良介君、大丈夫かい?」
 心配そうな表情でつじまるくんが顔をのぞき込んだので、慌てて良介は掴んでいた袖から手を離し、何とか笑顔で返事をしました。
 「大丈夫さ。それより立野君の姿は見つかったかい?」
 「うーん、そろそろ来る頃なんだけどねえ。あ、あそこにいるのがきっとそうだよ」

 つじまる君の指さす方を見ると、確かに探していた立野君です。
 高そうな茶色のセーターとグレーの長ズボンはいつもの格好なので、すぐに分かりました。
 「やあ、君たち、もう来ていたんだね」
 早足で近づいてきたので、立野君の息があがって、白い息が信号機のすぐ下まで昇っていきます。
 「さあ、いこう。もうお腹ペコペコだよ」
 食いしん坊の立野君らしい言葉に、僕たち2人は顔を見合わせて笑ってしまいました。
 そうすると立野君もつられたように笑って、僕たち3人の笑い声が、 青い空に吸い込まれていきました。

 
 「貴絽さん、大丈夫ですか?」
 心配そうに顔をのぞき込まれた。私は一瞬どこにいるのか分からなくなってしまった。
 「大丈夫だよ、つじまるくん・・・いや、すみません、つじまる師匠。」
 「本当に大丈夫っすか?立野さん、来ましたよ」
 「大丈夫、大丈夫。さあ、お待ちかねの餃子ですね」
 慌てて取り繕った私は先頭に立ってドンキホーテの階段を降りる。
 そこはお気に入りの餃子屋、安亭。
 前日の会社の送別会でアルコールを飲み過ぎたので、ノンアルビールで乾杯。
 いつも通りの熱々餃子を頬張りながら、3人で卓球TALK。
 IMG_20191216_123804643IMG_20191216_123323820








 ビールの味がするせいか、ノンアルコールにも関わらず、多少酔ったような気分になれる。
 1時間くらいはあっという間に過ぎて、つじまる師匠はお帰りの時間。
 名残を惜しみつつ、つじまる師匠は駅へ、私と立野さんは新宿スポーツセンターへと、交差点を後にしたのであった。

 
 
 
  

 俺の名前は貴絽良介。
 都内の三流私大に通う、平凡な大学生だ。
 同学年の奴らは学期末のテストに向けてスパートをかけている頃か。
 テストなんて、ばからしいぜ君たち。
 教育の現場では1点1万円で取引されている現実を知らないのか、知らない振りをしているのか。
 俺はと言えばジャージにリュックと身軽な格好で新宿某所を歩いているところだ。
 ジャージといったって海外ブランドの特注品だ。その辺の若造には着こなせないハイセンスな服だが、俺が着ればビシッと決まる。フルオーダーメイドだから当たり前だ。 
 
 
 新宿駅の一般人には公開されていないプライベート駐車場に愛車の(外見は)ノートハイブリッドを停めて、そこから数分歩いただけでのどかな公園にぶつかる。
 この敷地内にあるスポーツセンターが今回の目的地だ。
 公営のスポーツセンターなどえらく庶民的だが、俺はこういう所も嫌いでは無い。
 トランジスターグラマーな受付嬢に愛想笑いをしながら3階まで上ると、だだっ広い通路にまでカンカンと小気味よい音が漏れ聞こえてくる。
 いつもながらこの音を聞くとアドレナリンが過剰に分泌されて、体が戦闘態勢になる。
  
 鉄製のやけに重い扉を開けて体育館へ入るなり、お目当ての人物の後ろ姿が目に飛び込んできた。
 気配を消して近寄る俺に気がついているのかいないのか、辻円弥 通称つじまるは筋肉質な体を薄いTシャツに包んだ身軽な格好で、俯いて座り込んでいる。
 「久し振りだな、つじまるよ」
 「物騒な気配を感じたが、やはりお前か貴絽良介」
 後ろを向いたままだが、ニヤッと笑った顔が想像できた。

 俺とつじまるのつきあいは長い。
 中学校に進学早々アラブ圏の某組織に放り込まれた俺が、言葉も通じず金も無く、スパイ容疑で殺されそうになり、親父仕込みのサバイバル術を駆使して脱出を企てていたときに遡る。
 鉄条網の植え込まれたやけに高い壁を乗り越え、あと一息で成功というところで結局捕まり、死にものぐるいの格闘をした相手がこのつじまるだったのだ。
 殺し合いの中でお互い日本人である事が分かり、意気投合して2人で逃げ出したのだが、後10秒遅かったらどちらかの首が折れるか目玉を潰されていたと思う。
 

 というような夢を見ていたら電車が止まり、高田馬場駅に到着した。
 澄み切った青空がビルの隙間から覗き、冬らしくない陽気も相まって、実に気持ちが良い。
 平和ですなあ。

 新宿スポーツセンターにつくとすでにつじまる師匠が到着していて、早速練習開始となった。
 先週はNetIn&EdgeBallClub練習会、今回は月曜昼間餃子会だ。
 午後からの練習もあるので、合計6本ものラケットを持ち込んだ。

 キョウヒョウ301 マークVXS ヘキサーパワーグリップSFX
 スワット 省狂3 GTT45
 エバンホルツ 剛力快速 アポロ5超極薄
 ピュアカーボン ヴェガプロ マントラS
 フォーティノフォース ロゼナ ラザンターV42
 カブリオレ ヴェガツアー マントラS

 卓球教室では良いと思ったマークVXSだが、つじまる師匠相手だと全然良いとは思えない。
 相手の球が遅ければ、しっかりスイングできるので弾みが弱いのも気にならないのだが、速い球相手だとネットを越すのが難しくなる。また一つ勉強になった。
 省狂3も同様。
 剛力快速とアポロ5超極薄の組み合わせはなかなか良くて、特にアポロ5超極薄は今まで使ったどの極薄ラバーよりも良い。ブロックもしやすく、打てば結構普通に打てる。
 他の3本はどれも良い感じで、打っていて楽しい。
 1時間30分ほど全力で打ち合い、午前の部は終了した。
 

 
 

 

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