よく言うじゃない、用具は固定した方が良いって。
 同じ用具を使い続けることで感覚が研ぎ澄まされ、 技術が身についていく。
 逆にしょっちゅう変えていると毎回異なる感覚に慣れなくてはならず、慣れる前に変えてしまうからちっとも上達しない。

 それはそうだろう。
 私だってそう思う。

 でも怖い。
 
 何が怖いって、 そうして使い続けて感覚を磨き上げ、その用具と一心同体になる。
 技術の向上があり、試合にも勝てるようになる。

 ところがある日その用具が廃番になる。

 直前に買いだめしても、いつかはなくなるし登録から外れる。

 結局また探さなくてはならない。
 しかも比較対象はもう決して手にできないお気に入りだったあの用具・・・。

 これは怖い。
 考えるだけで恐ろしい。
 
 ああ、だからみんな無くならなそうなテナジーを使うのか。
 人気があってたくさん売れている用具を買うのはそういう訳か。

 もしあまり人気が無いラバーを気に入ってしまったら、常に廃番の恐怖と戦わなくてはならない。
 失うことを恐れて、本当に大事なものを所有することが出来ない。

 これはあれだね、好きになった人が事故や病気で死ぬことが不安で、好きになることが出来ないのと似ているね。
 
 私は2度ほどお気に入りになりかけたラバーを廃番で失っている。

 一つはWRMで販売していたCornilleauのターゲットアルティマ。
 もう一つはandroのラザントグリップ。
 
 どちらもこれに決めよう、と決めた瞬間廃番になった。

 それ以来メインは決めつつも、入れ込みすぎないように注意している。
 もし完璧に固定してしまってまた廃番になったらと思うと夜も眠れない。

 裏ソフトに固定することもしない。
 急にルールが変わって、裏ソフトが禁止になるかもしれない。
 その日のために表ソフトも練習している。

 世界の構図が変わり、全員中国製ラバーの使用を義務づけられるかもしれない。
 だから中国のショップと取引をして、いつでも購入できるようにしておく。

 ラケットも固定しない。
 あるひ目が覚めたらシェークラケットが全面禁止になっているかもしれない。
 だからペンも練習しておく。
 
 シューズの使用も制限される可能性も否定できないから、裸足での練習も加えた方が良いかもしれない。

 卓球が禁止になるかもしれないから、テニスの練習もしておくべきであろう。