久し振りにつじまる師匠と打って食って飲んできた。
 ラバー貼りラケットからテナジーまで、実に様々な組み合わせで打ちまくった。
 それは練習とは言えないかもしれない。
 試打ですらない可能性もある。

 持ち寄ったラケットを使って順番に打ち、片方は強打、もう片方はブロックをひたすら繰り返す。
 初速は速いが伸びはそれほどでもないタイプ、回転量は多いが弧線が低い攻撃的なタイプ、ひたすら安定して連打できるタイプ、ドライブよりスマッシュ向きなタイプ、中には表ソフトや1枚ラバーが含まれる場合もある。同じ1枚ラバーでも回転をかけやすいタイプ、ほとんどかからないタイプなど色々だ。

 知りたいのは強打したときの打球感や、その用具の(自分なりの)最大値。
 試合に出て勝つことより、気持ちよく打てる用具を探し求める、まさにエンジョイ卓球派。
 短時間の中でテンション、粘着、高弾性、粒高、表、シェイク、中ペン、日ペン、純木、特殊素材などごちゃ混ぜにやる。
 少数派故になかなか理解されないが、運動にもなるしストレス発散にもなるし、会話をしながら打てるのでコミュニケーションにもなる。
 勝ち負けがないのでストレスも全くなく、ただただ楽しいだけ。
 バッティングセンターやゴルフの打ちっ放しにも似ているが、対人ならではの楽しみもある。
 自分が打って楽しいだけではなく、相手の打った球を受けて、あれこれ性能や(たまには)技術的な事について意見交換する楽しさ。
 「いかにも粘着な弾道だねえ」「直線的でブロックしにくいです」「バック向きだわこれ」「ブロック超安定(^_^)」「ちょっとそれ次打たせてよ」などなど、いい年したおじさん2人でわいわい騒いでいる。
 
 2時間も打ち合って足下が覚束なくなる頃には、日頃のストレスや疲れも大量の汗と共に流れ出て、お互いさっぱりすっきりした顔になっている。
 そうして渇いたのどをキンキンに冷えたビールで潤しながら、他愛のない会話を楽しむのもエンジョイ卓球派にとっては大事な楽しみ。
 
 日頃の運動不足やストレスに悩む大人にお勧めだが、欠点は程よい相手がなかなか見つからないこと。
 もしかしたらビジネスチャンスか?
 技術指導ではなく、相手の要望に応じてお相手をする卓球人材派遣。

 どんな強打も完璧に止める「ブロック屋」
 対下回転打ちを延々楽しめる「カット屋」
 何千回何万回でも体力の続く限り打ち合える「ラリー屋」
 わざとズタボロにやられて客の溜飲を下げる「打たれ屋」
 お好みのコスチュームでお相手をしてくれる「イメージ屋」
 練習後の飲み会でお酌をしてくれる「夜のバタフライ屋」
 ご婦人方に人気のミックスダブルス専門「ロマンスグレイ屋」
 用具の自慢話に的確な受け答えをする「相づち屋」
 教えたがりの爺様には素直にいうことを聞く上に上達した姿も見せる「教わり屋」
 
 必要なのは技術だけではなく相手を満足させる接客技術。
 卓球をしたくても相手がいない人が気軽に利用できるこのサービス。
 意外と人気が出るかもしれない。

 なんて事を、帰りの電車の中で考えていたら、いつの間にか熟睡していた。
 ある秋の晴れた日の昼下がりであった。