①長屋
お富「ちょっとあんた、家の金を持ち出して、どこへ行こうってんだい」
六兵衛「うるせえばばあ、俺が自分で稼いだ金だ、おめえにとやかく言われる筋合いはねえんだよ」
お富「何言ってんだいこの宿六が。この金は私が内職で稼いだ金じゃないか。適当なこと言うんじゃ無いよ」
六兵衛「いいからおめえは黙ってろい」

六兵衛 金を握って走り出す

お富「帰ってきたらただじゃおかないからなこのろくでなしのとうへんぼくめ」


②店の前
六兵衛「へへへ、今度は間違いねえ。今度こそ当たりだってんだ畜生め」

ガラガラ 戸を開ける音

店主「へい、らっしゃい、ってロクさんかい」
六兵衛「おうおう、最強らばあ"てなじい"ってのをだしな」
店主「"てなじい"ったあ景気が良いね。特厚、厚どちらがいいかい?」
六兵衛「 特厚に決まってんだろうこのトンチキめ」
店主「 200文になりまさあ。銭はあるのかい?」
六兵衛「高えなあ。蝶屋のやろう、足下見やがって。おら、200文だ、しっかり数えな」
店主「毎度どうも!」


③薄暗い一室
六兵衛「おら見ろこれが最強らばあの"てなじい"よ。こちとら200文もつぎ込んでいるんでい。おめえらの貧乏らばあなんかに負けるもんかい」
男1「それでは勝負勝負。両者台について」

カンカン

六兵衛(勝てば200文なんかあっという間に取り返せるってもんよ。この最強らばあ"てなじい"でな)

カンカン

六兵衛(・・・・ちっとも入らねえ。卓球幕府の用具欄でみんなべた褒めだったじゃねえか)

カンカン

六兵衛(・・・何が最強らばあだ畜生め。全然入りゃしねえ)

男1「勝負あり」

六兵衛「こりゃなんかの間違いだ。もう一度だけ勝負してくれ」
男1「 勝負あったんだ。けえりな」

六兵衛すごすご帰る

④長屋
お富「どの面下げて帰ってきたんだい、このひょうろくだま」
六兵衛「すまねえ。こんなはずじゃ・・・」
お富「またこんな高いらばあを買って。バカだねあんたは。たいした腕前でもないのに」
六兵衛「面目ねえ。これからは心を入れ替えて"でぐにくす"にする」