「母ちゃん、また俺のウェア勝手に着たな」
「 正男の服は派手だし汗もすぐに乾くから丁度良いのよ」
「もー、やめてくれよ。母ちゃんが着るとワンサイズでかくなるんだよなあ。 あーあ、伸びてロゴが潰れちゃったよ」
「悪かったわね、引き締めインナーを着れば大丈夫だと思ったんだけど」
「そういう問題じゃな、あっ、ウェアのパンツまで履いたのかよ。」
「やっぱりセットで着た方が良いかと思ってね、コーディネイト的に」
「うわー、ゴムゆるゆる。ホント、勘弁して欲しいよ。だいたいサイズが全然合ってないだろ」
「これくらい小さい方が動きやすいのよ。フットワークも軽くなるし」
「だからって無理矢理息子のを履かなくてもいいじゃんかよ。これじゃずり落ちて友達に笑われちゃうよ」
「 ごめんごめん、伸ばさないようにお腹に力を入れてたんだけど、やっぱりダメだったかねえ」
「もう絶対禁止ね、俺のウェア着るの」
「分かった分かった、部活行くんでしょ、早く用意して行ってきなさい」
「 もうこんな時間か。えーと、靴は持ったし、タオルも持ったし、あれ、ケットが無い」
「あっ、返し忘れた」
「何だよ母ちゃん、ラケットまで勝手に持ち出したのかよ。早く返してよ。練習遅れちゃうよ」
「ちょっと待ってて、すぐ持ってくるから。はい、確かに返したからね」
「当たり前だろ、大事なラケット黙って持ち出すなよ。うわ、グリップがぬるぬるする。何だよこれ、汗・・クンクン・・・ニベアかよ。臭いよ、最悪だよ。それになんで変な飾りが付いてるんだ。なにこの羽みたいなひらひら。こんなのラバーに貼り付けてたら先輩に殺されちゃうよ 」
「やっぱりひらひらが無いと寂しくてねえ。」
「意味分からないよ。なんだよ寂しいって。だいたい母ちゃん、卓球なんかやらないじゃんか。何に使ったんだよ」
「ほら、駅前にできた新しいビル知ってるだろ」
「ああ、何かできてたね」
「あそこに凄い店見つけちゃってさ。母ちゃんが若い頃流行ってたジュリアナ東京にそっくりのディスコ。最近すっかりはまっちゃって良く踊りに行っているのよ」
「まさか母ちゃん」 
「色々イベントやっててね、今週はスポーツコスプレをしていると優先的にお立ち台で踊れるっていう」
「う、う、う、うああああああああああああああああああああああああああああああ」