昔はパソコンショップが怖かった。
 見当違いの質問をしたらつまみ出されそうな雰囲気の店ばかりだった。
 今は卓球ショップが怖い。
 何が怖いって、何を聞いて良いのか分からないのが怖い。
 「何かお探しですか?」とか声をかけられたらその場から逃げたくなる。
 本当は質問したい。
 「このラバーってどんなの?」
 「このラケットってどんな感じ?」
 曖昧なのだ質問が。
 だって他に聞きようが無い。
 調べによると、店員がされても困るNGワードがあるらしいじゃないか。
 「 このラバーは弾みますか?」
 「このラケットとラバーの相性はどうですか?」
 「このラケットはスピード速いですか?」
 まさにこれを聞きたいのだ。
 でもそれを聞いてもどうにもならないらしい。
 つい口にしてしまいそうで怖い。
 口に出したら店員がため息をつきそうで怖い。

 現在使っている用具、自分の技術レベル、どういうことをしたいのか、今の用具に何が不足していてどういう性質を用具に求めているのか、きちんと説明しなくてはならないのだ。
 
 「手前、いたって不調法、あげますことは前後間違いましたらご免なお許しを蒙ります。手前、生国は武蔵野国は春日部でござんす。手前、縁もちまして親分と発しまするは辻丸一家二代目犬千代の若い者でござんす。姓名の儀声高に発しまするは失礼さんにござんす。姓は貴絽、名は良介と申す。しがないかけだしもんにござんす。今使っているラケットはスワットに両面マークVでござんす。もちろん厚、でござんす。いまだ試合で勝ったことは無いのでござんす。コーチからそろそろラバーをもう少し弾むのにした方が良いと言われてここを紹介されたので来たのでござんす。面体お見知りおきのうえ、向後万端よろしくおたのもうしやす 」

 こんなことほとんど面識も無い店員に流暢にぺらぺらと話せるか?