はるばる東京まで出向いてグループレッスンに参加してきた。
 いつもの卓球教室も、家族も、卓ログ関係も、誰も相手にしてくれないときに利用しているこのレッスン、コーチと打っていない時は生徒同士で打つ。
 参加している生徒は毎回変わるので結構緊張するのだ。
 自分と比べて上手すぎても恐縮してしまうし、逆の場合は物足りない。
 ドキドキしながら開始時間を待っていると、今回の人数は私を含めて4人とのこと。
 コーチの一声でほとんど説明も無しにレッスンが始まる。
 最初の相手は誰かな・・・
 中ペン使いの、私より年上の男性だ。
 このレッスンのシステムとして、決まった側の生徒が練習内容を指定する。

 えー、なにをやりましょうか?
 はいはい、ツッツキですね
 いきなり難しいことを言われなくて良かったよ
 いるからなあ、フォア前にショートサーブをだすからストップでレシーブしてもらってそれをフリックでバックに返すからストレートに返球してもらってとかなんとかそんなの長くて覚えらんわ
 ではサーブを出してくださいね
 ほい、ツッツキ・・あれ、浮いてしまいますねすみません
 もう一度お願いします
 おりゃ、ツッツキじゃ・・また浮いてしまいました
 えー、本当に下回転かけてます?
 横上回転のような気がするのですが・・ 
 あ、上回転でもツッツキで返せ、っていうことですね、すみません、素人なもので・
 
 冷や汗をかきながら必死にツッツキ
 今度は浮いた球が来たらお互い打ち込むんですね 
 分かりました
 基本的にはあなたの練習ですから、どんどん打ち込んでくださいね
 ほら、浮いた球が行きましたよ、チャンスです
 あれ、無理矢理ツッツキで返ってきましたね
 私が打ってもいいんですかね
 いいですか、打ちますよ、それ
 あ、オーバーしてしまいました
 なんかすみません
 今度こそチャンスボールですよ、打ってください
 おや、また打たないんですね
 これは心理戦ですか
 疲れます とても疲れます
 
 とても感じの良い人なのだが、何の練習なのかよくわからないままローテーションとなる。
 ほっとして次の台に移るとまた別の男性が待っている。
 今度の方は、日ペン使いの男性だ。
 みるからにパワフルな球を打ちそうな良い体をしている。
 ドライブ練習でもするのかな。

 えー、何をやりましょうか?
 え、ブロックをするからドライブを打って欲しい?
 いきなりブロックですか
 こちらが戸惑っているためか、ドライブ打てますかと心配されてしまったよ
 得意でも無いですけど頑張りますよ
 ではお願いします
 あ、そちらのサーブからなんですね
 って、下回転サーブですか
 しかも短いですね
 いえ、頑張って打ちますよ、こう右足をぐっと寄せて
 おっと危ない、2バウンド
 サーブ、お上手ですね
 ちょっと、私の腕前では短すぎて・・
 もう一度お願いします
 よし、今度こそ
 また2バウンド
 無理矢理打ったらラケット擦っちゃいそうです
 もしかしてそれが狙いですか
 あなたが噂のラケットブレーカー?
 私のビスカリアがカンに障りましたか
 そんな噂は無い?
 そうですね失礼しました
 気を取り直して
 もう一度お願いします
 よし、今度はギリギリ台から出たので打てます!
 ブロックしてくださいね
 あ、ブロック弾いてしまいましたか
 私のドライブ、ほとんど威力は無いんですけど
 ではサーブを出してください
 くっ、また2バウンドギリギリ・・・
 危うく踏みとどまりましたが、ラケットを台にぶつけそうになりましたよ
 分かりました
 これは心理戦なのですね
 分かりましたが、なんだか疲れます
 練習相手を務めるプレッシャーと、ラケットを守る本能との板挟み
 
 感じは良い人なんだけどなあ
 それともこの人の練習相手は短い下回転サーブも台上ドライブで簡単に返せるレベルなのか
 それだったら申し訳ない
 ちょっと私には難しすぎる 

 さて次の人は
 シェーク表、かな
 よろしくお願いします。

 今度は私が内容を指定する番ですね
 それでは下回転サーブを出すのでツッツキで返してください
 ドライブで返すので後はオールでお願いします
 それ、下回転サーブだ
 ツッツキ、お願いします
 ありゃ、ミスっちゃいましたか
 なんか凄い顔して怒っているように見えますけど、自分に叱咤激励をしているんですね
 私が怒られているのかとドキッとしてしまいました
 もう一度、サーブです
 ナイスツッツキ!
 よし、ドライブ上手く打てたぞ
 フォア側を抜けていきました
 っと、ラケットを叩いたり自分の頭を殴るのはやめてください
 そんなに深刻なアレじゃないし、試合でも無いし
 ミスする度にそれをやるのですか
 だんだん怖くなってきましたよ
 自分に厳しいのにも程があります


 早くローテーションして欲しいです
 この場から逃げ出したいです
 変なプレッシャーを感じて疲れます
 

 とまあこんな感じで気疲れはしたが、皆さん決して不愉快な人では無く、むしろまた練習したいくらいであった。
 この中のお一人からは練習後に声をかけていただき、色々楽しく話したのだが、練習中の厳しい雰囲気とは異なって、笑顔が印象的な親しみやすい人だった。
 そういえば、向こうか見たら私こそ曲者という可能性もあるなあ。