新聞を手に取ったら高校入試問題が掲載されていた。
 もうそんな時期なんだなあとコーヒー片手に国語の問題を読んでみた。
 今年は小説が題材のようで、全文掲載できないので冒頭に荒筋が書いてある。
 そうそうこんな感じだったと懐かしく思いながら、問題を解いてみる。
 内容についての選択問題が多いのだが、どうやっても間違えようのない選択肢ばかりで、きっと緊張しているとこんな問題でもミスをしてしまうんだよなと、受験生の記憶が蘇ったりもした。
 いかにも国語の入試問題で設問に使われそうな文章を、卓球関連だったらこんな感じかなと思いつくままに書いてみた。
 それっぽい登場人物、思わせぶりなセリフ、続きがありそうでなさそうな雰囲気、存在しない長い小説の最後の一文。
 私の書いた文章である。
 どうしたってちょっと妙なテイストが入り込むので、何が面白いのか分からない人の方が多いと思うが、私の頭の中はいつもこんな文章で満ちている。


 

「私にだって、分かるもん。お兄ちゃんが、いけないクスリを塗ってたこと。でも、お兄ちゃんには勝って欲しかった。悪い人を、みんなやっつけて欲しかった。」
ジロウは泣きじゃくる幸子の頭をぽんっと軽く叩き、むしろサッパリとした表情で審判長席へと歩き始めた


マジックカーボンが良いだなんて、本当はそんなこと、これっぽっちも思っていないんだろう?


ビスカリアを手にした僕は無敵だった。クラスの誰もが敵わなかった。
乱暴者の剛だって、こそこそ逃げ回るほどだった。
だから僕は勘違いをしてしまったんだ。



僕もいつかはディグニクスを買うだろう
そうして大事な何かが、手のひらからこぼれ落ちていくのを、きっと悲しく思うのだ




「ところがどっこい、マークVは今でもちゃんと生きている おめえらの知らないところでな」
ふわりと長い煙をくゆらせて、親分は嬉しそうに笑った


もう、お兄ちゃんの意気地無し
相手がテナジー05だからって、負けとは限らないわ。

 

太陽極薄・・・
もう俺に残されたラバーはこれが最後か

「速さがモットー カイリキ」を使う日が来ようとは
神ならぬ身には知る由もありませんでした

「ここまで来れば誰もいないだろう」
そう呟いたジロウは銀色のエナメルバッグの中からラバーと一緒に紫色の小瓶をそっと取り出し・・

「このブラックバルサ5.0は亡き父の形見 お前ごときに渡してなるものか」
そう叫んだ秋彦の目から止めどなく涙が溢れるのでした

「いいかい幸子 ラバーは生き物なんだ むやみに貼ったり剥がしたりしちゃならねえ」
優しく諭すように語りかけてふと上を見ると、見事なまでに晴れ渡った夏の空なのでした

「俺は緊張しているのか?」
汗で滑り落ちそうなビスカリア風ラケットのグリップをギュッと握り直した

くすんだベージュ色の膜をやっとの事で剥がすと新品と変わらぬスポンジが顔を出した
「やあ、キレイだ」
こぼれ落ちた言葉を慌てて飲み込んでジロウは辺りを見回した

「無理矢理伸ばせばまだまだ使えるはず」
ジロウは泣きべそをかきながらラウンデルの両端を引っ張った

「君はテナジーテナジー言うがね、テナジーってえのはそんなに偉いのかい? 僕にはどうも、そうは思えないんだ」
俯いたまま呟くと、小五郎はステッキの先で小石をはじき飛ばした

「君の言う通り、このディグニクスは剥がすとしよう。こんなものにいつまでも頼っているから、争いがなくならないんだね」
そうして海に向かってディグニクスを放ると、波立つ夕日の中に吸い込まれていく様を、いつまでもいつまでも、じっと見ているのでした

「俺の父ちゃんは、卑怯者なんかじゃ、無い。
粒高は、正式に認められた、立派な用具だ」
絞り出すような正男の声に、教室の中は静まりかえった

おっと、その懐から顔を覗かせている物騒なラケットはしまいたまえ

「坊や良くお聞き。お母さんはお前の事が嫌いになったんじゃない。ただ、ちょっとその表一枚ラバーが苦手なだけなんだよ」

「あっはっはっは、僕だよ小林君。こんな剛力男子を持った老婆が、いるわけ無いだろう」
なんということでしょう。
老婆の腰がみるみるうちにシャンと伸び・・